遺伝性疾患.2
遺伝性疾患は防ぐ事が至極簡単です。
遺伝性疾患を持った親犬をブリーディングに使わなければ良いだけの話なのですから。
ある種の遺伝性疾患であるなら国内外の検査機関で比較的容易に調べることも可能です。
血統の登録が成され一部ですが遺伝性疾患の血統が分かる機関もございます。
万一、ブリーディングの結果遺伝性疾患と分かる仔犬が産まれてしまったらその血統はブリーディングから排除すれば良いだけのことです。
私個人の意見ですが、ダップル班(ダックスフンドやシェットランドシープドッグ等にあるコートカラーの一種)やパイボールド(ダルメシアンやダックスフンド等にあるコートカラーの一種)はブリーディングに使うべきではないと考えております。
そうなりますと、ダルメシアンは犬種として絶滅してしまうことやダップル/ブルーマールの美しいコートカラーを見る事が出来なくなることも承知しています。
ただ、ダップルやパイボールドに高い可能性で発生する難聴・盲目を伴う視聴覚障害、内臓疾患等の遺伝性疾患を見逃すことは人間のエゴと認識するからです。
パグ脳炎も治療法のない悲惨な病として、遺伝性疾患の可能性も有りますので、発症した血統は全てブリーディングラインから外すべきと信じております。
鼠径ヘルニア、臍ヘルニアも大きさや症状によっては、将来手術により治療する場合がございます。
遺伝により引き継がれる可能性も高いのでブリーディングラインより外すべきと考えます。
ところが、大枚を払い購入したドッグショーなどで上位入賞を狙える質の高い種牡(交配を担当させる牡犬の別称)や台牝(出産を任せる牝犬の別称)に、この様に遺伝性疾患が現れたとしても致死遺伝子や表だった奇形が産まれる訳でもないとの言い訳を点けて繁殖に使ってしまうブリーダーが多くおります。
知識も無く、もしくは我が家の子は大丈夫だろうと安易に考え繁殖に使った結果、子々孫々まで伝わってしまう可能性の高い遺伝性疾患を広げてしまうことは、ブリーダーとしての罪であると私は思います。
かくいう私もお恥ずかしながら遺伝性疾患について大部分を承知しておりません。
どの様な病名で、いかなる症状が現れ、どの様になるのか。
治療法は如何に…
ブリーダーを勤めていく限りは、知識を増やし、排除すべき遺伝性疾患を理解するつもりです。
持っている知識を伝える為に告知・啓蒙し、少しでも多くのブリーダーに理解してもらえるよう努力を怠らぬつもりです。
遺伝性疾患を持つ子を差別し排除するなどとは毛頭考えておりません。
遺伝性疾患は感染する病気ではありません。
今ある命は大切にするべきです。
ただ、遺伝性疾患の遺伝子を持つ子は赤ちゃんを作ってはいけないと論じているのです。
しかしこれば、優生思想と呼ばれる「障害の有無や人種等を基準に人の優劣を定め、優秀な者にのみ存在価値を認める」とする優生学と通じるところも廃しきれぬところもあります。
命を作り出すブリーダーとしては、第三者との意見が違うことを承知しながらも、独善的であろうと自己の信じる考え方を全うする強いポリシーも必要な気が致します。
掛け替えのない命を紡ぐ仕事をしているのですから。
※ 社団法人ジャパンケンネルクラブ(JKC)では所有者(ワンコのオーナー)希望にて、
特定非営利活動法人日本動物遺伝病ネットワーク (JAHD)による股関節形成
不全症/HD(2006年4月〜)と肘関節異形成症/ED(2006年7月〜)の評価
結果を血統証明書に記載しています。
極近親{親子・兄妹姉弟(異父・異母を含む)}繁殖はJKCの「許可制」となって
おり、許可がないブリーディングを行った場合は血統書の発効が認められません。
近親交配は優れた犬質を維持・継続させる為に行うのですが、奇形児が生まれ
やすく、骨格や身体が小さくなったり、遺伝性疾患、欠歯、内臓疾患、陰睾丸等
が発生しやすくなる近親交配を行うべきではないと考えます。
又、遺伝学的に解明されていないはずですが、JKCでも「臆病及び獰猛な性格を
有する犬の子犬は性格が親犬に似るので注意が必要です。性格は非常に遺伝
力が強く出現します。」と穏やかでない性格の親からのブリーディングは慎むよう言わ
れております。
私達も実経験から、仔犬は特に母犬の性格を受け継ぎやすいと感じております。
2008.10/28